血管の病気とその治療これから治療を受ける前に是非ご一読ください
閉塞性動脈硬化症(ASO)
閉塞性動脈硬化症という足の血行障害を来たす病気があり、壊疽を来すもっとも多い病気です。通常は50才以上の男性に多い病気ですが、糖尿病がある場合は20才台からでも発病し、男女差はありません。粥状硬化という動脈硬化が原因で、足の動脈の壁にコレステロールが沈着して内腔が狭くなり、狭い部分には血の固まり(血栓と言う)がこびり付いて、一層狭くなり、ついにはつまって、血液が流れなくなります。そのため血管がある程度狭くなった時点から足の血行障害の症状が出てきます。最初の症状は間欠性跛行と言い、じっと立っている時や座っている時は異常を感じませんが、一定の距離を歩くと痛みを感じるようになります。すなわち数百メートル歩くと“ふくらはぎ”に痛みを感じ、10〜15分間立ち止まって休むと痛みが消失して再び歩けるようになるという状態を繰り返す症状です。階段を上る際は痛みがより早く、強く感じます。そのまま数か月〜数年間経過すると、歩いて痛みが出る距離がだんだん短くなってきます。階段は上がれなくなります。さらに病気が進むと足趾の先に小さな傷ができ、次第に大きくなって潰瘍となり、痛みも伴います。痛みは次第に増強し、夜間痛くて目が覚めたり、さらには痛くて眠れなくなります。
糖尿病のある閉塞性動脈硬化症
この閉塞性動脈硬化症という病気は、糖尿病のない人にも起こりますが、糖尿病のある閉塞性動脈硬化症では血行障害の進行が速く、重症化しやすいという特徴があります。診断が遅れて放置していると壊疽が急速に拡大し、感染を併発して切断せざるを得ない事態に陥りやすいのです。動脈の障害(病変)は膝から下の細い動脈に起こるため診断がつきにくく、医師の病状に対する認識も十分でない場合が多いため、切断される頻度が高くなります。糖尿病がもとで維持透析になっている場合はもっと重症です。
足壊疽を来すそれ以外の病気
足壊疽は、最近、急増を続ける糖尿病/維持透析例ばかりが注目されていますが、これら以外にも足壊疽を来すいろいろな病気があります。以下はしばしば経験される病気です。
- バージャー氏病
- 関節リュウマチや強皮症などの膠原病に由来する血管炎
- 血管腫瘍や圧迫性疾患
- 塞栓症、特にブルートー症候群(カテーテル検査後に多い)
従って下肢血行障害を診るとき、医師はこれらの病気の存在と特徴を良く理解し、検査や治療の方針を立てねばなりません。
治療法の選択
下肢血行障害よる壊疽があり、同じようにみえても、病気の原因、虚血重症度、血管病変重症度により、治療方針や治療法は大きく異なってきます。内科的治療がよいか、血管拡張術(カテーテル治療)がよいか、血管移植手術が必要か、それらの併用療法か、あるいは病気や病態によって選択してはならない治療法もあります。長期の改善を保証できる適切な治療法の選択には、疾患の特徴、病理・病態を専門的に診断・把握することが必要です。
治療の進め方
- 血行再建術:まずは血行障害の改善で、虚血病態の軽重により治療法が選択されます。重症例はバイパス手術が第一です。
- 壊疽・感染の治療:血行障害に対し適切な血流改善治療が行われれば、壊疽はそれ以上進行しませんが、多くの場合、壊疽は感染を伴うため、感染に対するの治療が不適切ならばやはり壊疽は進行しますし。血行再建後はむしろ感染が進行しやすくなるともいえますので、感染に対し、特に創傷治癒(傷を治す)に関する専門的な知識と治療経験が必要です。
- 足部の形成術:壊疽を切除し、感染を抑制できたら、最後に足趾の形成が必要ですが、壊疽が小さい場合は自然になおります。壊疽が大きい場合、特に足の趾がすべてなくなって、足の骨が露出しているような場合には、もう一度手術が必要になります。いずれにしろ少しでも快適に歩けるようにするには、足趾をできるだけ大きく残す(助ける)ための治療方針と治療法が求められます。
足が救済された後の治療
最後は、足だけではなく全身病としての閉塞性動脈硬化症に対する治療です。閉塞性動脈硬化症では、その60%で、虚血性心疾患(心筋梗塞の原因)を合併しており、25%には脳動脈病変を合併しています。これらはいずれも足が悪いためあるいは糖尿病のために症状がでない、いわば隠れている致命的病気です。足だけの治療に気をとられていると心筋梗塞や脳梗塞で急死するということになります。従って閉塞性動脈硬化症による下肢壊疽は全身病であるという認識が重要で、下肢に加えて、心臓と脳血管の3つに注目した治療計画を立てる必要があります。
あなたの主治医は信頼できるか
足の血行障害で治療を受ける前に、“血管の病気”の専門医ならば当然説明すべき諸点があります。次の下肢血行障害に関する8項目と足趾壊疽に関する4項目、術後と予後に関する3項目を担当医師に伺ってください。
- 1. 下肢血行障害に関しては
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- 診断名は何か、虚血重症度はどの程度か
- それに対する治療法の種類にはどのようなものがあるか
- その疾患に対する治療法の種類と国内、外における各治療成績はどうか
- 幾つかの治療法の中で、今回はなぜその治療法を選択したか
- その治療はどのくらいの期間有効か
- その治療が無効になる原因は何か
- その治療が無効になったらどうするか
- その治療が無効にならないようどのような工夫があるか
- 2. 足趾壊疽に対しては
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- 感染があるかどうか
- 感染があるならその菌は何か
- その感染抑制をどうするか
- 壊疽に対する術前、術後の治療方針はどの様なものか
- 3. 予後に関して
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- 治療後は歩けるようになるか
- 定期検診をどのようにするか
- 心臓、脳血管の検査はどうするか
上記の説明の課程では、その疾患に対しその医師は「どれだけの経験があるか」や「その治療法をどれだけ経験し、その5年間の成績はどうか」なども説明されるべきでしょう。
担当医の回答の妥当性は本ホームページから知ることができますので、各項目をご参照下さい。
旭川医大第一外科では、このような種々の疾患による重症虚血肢(足壊疽)に対し、切断を回避して、自力歩行を可能にするため種々の治療手段を用いて、足の救済に努めています。年間100人以上の患者さんが道外から来院されますが、これまで来院された患者さんの多くは他院でいろいろな治療を受け、うまく行かなかったために紹介されてきました。その中には、一方的な切断宣告に驚いてご家族が直接、インターネットのメールで探し当ててきた例、手術が必要ないのに無用な手術を受けて悪化した例、逆に手術が絶対に必要なのに手術が不可能と宣告されて、無意味な血管拡張術(カテーテル治療)や血管新生療法などを受けて悪化した例など様々です。前医での治療の失敗はいずれも手術を一層困難にするものでした。たとえ壊疽が広汎でも、踵が助けられれば足先がなくなっても義足なしで歩けるようになります。無用な治療を避け、救肢の可能性をとどめるために
- 切断は最後の最後の手段であり、現代医学において切断は治療とはいえないこと
- 医学的に血管移植手術が不可能な例はないこと
- 血管移植では生きている部分(肌色の部分)はすべて救済できます
血管の病気に関するお問い合せ・連絡先
第一外科教授 笹嶋 唯博tel.0166-68-2490 fax.0166-68-2499
e-mail:sasajima@asahikawa-med.ac.jp
毎月一回東京新宿石川病院にて血管外来を診ていますので
ご希望の方は、上記へご連絡下さい。


