血管の病気

胸郭出口症候群

病気の概要

頸部の筋肉群(前、中斜角筋)と第一肋骨の間で腕に向かう神経や血管が圧迫されて、上肢を挙上したり伸ばしたりした時、腕のしびれ感、倦怠感や脱力感、肩、背中、腕、後頭部の痛みなどを訴える病気である。神経を主に圧迫される場合と動脈や静脈が主に圧迫される場合がある。本疾患は一般に動脈を圧迫される病気を考えられているが、実際の頻度は神経性が80%で最も多く、静脈性は15%、動脈性は数%で最も少ない。いずれも第一肋骨と斜角筋を切除することにより改善するが、神経の圧迫では頸の近くで圧迫されている場合(高位)と首の下の方(下位)で圧迫されている場合があり、手術の前には、その診断を明確にする必要がある。

診断は?

神経性も動脈性も腕を上方に上げると手がしびれてくる。神経性では、首の頸動脈の外側に沿って圧痛があり、また肩甲骨内側や後頭部の痛みを訴える。また手のしびれや痛みは、腕を外側に上げると強くなる。手指のしびれは小指側から指全体まで様々である。手に力が入らず持っている物を落としてしまうことがある。動脈性(5%)では手を上げると蒼白になり手首での脈が触れなくなる。手を下げると蒼白から発赤に変わり数分で元に戻る。動脈を造影すると圧迫が写し出される(図70)。胸郭出口症候群=動脈圧迫と多くの医師に誤解されています。しかし動脈の圧迫像は、軽度の圧迫も含めると正常でも約半数の人でみられることから動脈造影による圧迫像の検出は意味を持ちません。動脈性の診断には、上肢挙上による上記のような明確な手虚血所見や鎖骨下動脈瘤の形成(図71)、それによる手指の塞栓症(図72)などが必要です。慎重を要します。静脈性(15%)は通常、自覚症状はなく、上肢の腫脹(紫色のはれ、むくみ)で発症します。

図70 図71 図72

治療は?

保存的治療(リハビリテーション)

前斜角筋、中斜角筋、および第一肋骨より形成される三角間隙(scalene triangle)という部分を広げるような運動をします。

要点は、

  1. 背骨をまっすぐに伸ばす習慣をつける(姿勢を良くする)
  2. 腹式呼吸の練習をする
  3. 坐位で肩を挙上する運動
  4. 坐位で頭を後から押してもらいそれに抗して後屈する運動
  5. 仰向けになる頭を持ち上げる運動を繰り返す
など多数ある。

外科治療

腋窩を横に切って脇の下をのぞきこむように第一肋骨を切除する方法があるが、肋骨のみを取る方法では十分な圧迫解除が得られない例が多く、また有効例でも長期的に再発することが多い。この反省から最近は、鎖骨の2cm上の頸を横に7〜8cm切って第一肋骨切除に加え斜角筋の付け根も一緒に切除する方法が最良とされ再発が少なく手術結果が良好である(図73)。神経性の場合は狭小な斜角筋間隙で圧迫されている場合の外に、異常な筋肉や靱帯による圧迫があり、これらの場合は、十分に異常を確かめるため切開が10cmくらいの大きさになる。

図73

手術の合併症にはどんなものがあるか?

腕の神経が障害される可能性はほとんどないが、横隔膜神経と肺(胸膜)の損傷があり得る。横隔膜神経障害は呼吸に変調をきたすが、症状のない場合もある。症状がある場合は、横隔膜を縫縮する(縫い縮める)手術が必要である。肺(胸膜)の損傷は手術中か手術1日目にはわかるので、胸に管を入れば数日間で治る。いずれもスポーツ選手では問題だが、日常生活には問題を生じない。

血管の病気に関するお問い合せ・連絡先
第一外科教授 笹嶋 唯博
tel.0166-68-2490 fax.0166-68-2499
e-mail:sasajima@asahikawa-med.ac.jp

毎月一回東京新宿石川病院にて血管外来を診ていますので
ご希望の方は、上記へご連絡下さい。

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